2019.01.05

東海大、箱根初制覇の一因。
阪口が生み小松が喜んだ「最高の4秒差」

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Kishimoto Tsutomu/PICSPORT/AJPS

「今回の小松の走りで思い出したの、(昨年の)全日本大学駅伝の湊谷(春紀/4年)のシーンだったんです。ちょうど鈴木くんの背後に小松がついたように、湊谷は青学大の森田(歩希・ほまれ/4年)くんにつかれて、プレッシャーに押しつぶされてしまった。それで今回は逆の展開となったので、鈴木くんにプレッシャーをかけられるかなと思ったので、まずは相手を前に出してじっくりいくように、小松に伝えました」

 小松は両角監督の指示どおり、背後につきながら時々並走し、相手の視界に入るようにプレッシャーをかけた。そして15キロ手前付近で前に出ると、持ち味のスピードを発揮し、一気に差を広げていった。

 8区での首位交代は、じつに10年ぶりのことだった。プレッシャーをかけられ続け、疲弊した鈴木に小松を追うだけの気力も体力も残っていなかった。

「走り始めて鈴木くんの表情や動きを何度も見つつ、自分がゴールまで駆け抜けることができる位置を探りながら、『ここ』っていうところでスパートをかけました。相手がすぐに離れていったので、戦略的な走りがうまくいったなと思いましたね」

 小松は1時間3分49秒というタイムで、22年ぶりに区間新記録を達成。チームもトップに躍り出た。

「4秒という差が、本当に絶妙でした。阪口が計算していたのかはわからないけど、この差のおかげで突っ込むこともなく、冷静に走れることができた。だから、結果的に先頭に立つことができたんだと思います」

 小松は笑みを浮かべてそう言った。そして阪口は、小松の快走に驚いたという。

「チームでいちばん調子がいい小松がうしろにいてくれたのは、7区を走る上ですごく楽でした。小松がいい走りをしてくれたおかげで、9区、10区の選手も走りやすくなった。さすがに区間新が出るとは思わなかったけど、小松は本当にいい走りをしてくれたと思います」

 ある意味、おいしいところを小松に持っていかれたようだが、阪口はレース前、両角監督からこんなことを言われていたという。

「『お前がおいしいところを全部持っていけ』と。でも、結果的に僕がうまく料理して、小松が食べたということですね」

 絶妙な4秒差──それが小松の区間新と、東海大の初優勝をもたらしたのだ。

(つづく)

関連記事