首位・東洋大と1分14秒差。
東海大が悲願の箱根初優勝へ視界良好

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Kyodo News,Kishimoto Tsutomu/PICSPORT/AJPS

 ここまではある意味、両角監督もイメージできていたのかもしれない。だが、両角監督を驚かせる走りを見せたのが5区の西田だった。

 山の5区は初挑戦になるが、西田は不安など微塵も感じさせず、まるで平地を走るように楽々と山を登った。その走りに、夏からの西田の成長の跡がハッキリと見えた。

 西田は、夏合宿に実業団の合宿に参加した際、福岡国際マラソンで優勝した服部勇馬と同部屋になり、一緒に過ごすことで競技面、生活面の両面で刺激を受けた。ジョグの距離を20キロにして、長い距離への不安を解消して、練習が終わるとマッサージなどのケアに時間をかけた。山の練習は、19キロのヤビツ峠を夏以降に4、5回走り、大学近くの弘法山はジョグのコースになった。『おまえ、変わったな』と両角監督に言われるほど競技に対する姿勢が変化し、その意識と努力を認められて早々に5区が決まった。

 そして、区間2位(1時間1118秒)の爆発的な走りを見せたのだ。

「西田の走りは想定外でした。あそこまで走るとは思っていなかった」

 両角監督の期待に完璧に応えた。

 もうひとつ、往路2位という成績を残せたのは、ピーキングがピタリと合ったからだ。

 11月の全日本大学駅伝以降、記録会への参加をやめて、その分、合宿を組み、箱根仕様にするべく長距離を走る練習をした。さらに、それぞれのコンディションに合わせて、選手個人にある程度調整を任せるようにした。自主性を重んじ、自分の調整に責任を持たせるようにしたのだ。

 その結果、1229日の段階で「チーム状態は100%です」と両角監督が断言するほどいい状態に仕上げることができていた。選手はピーキングをぴたりと合わせ、最大のウィークポイントを克服したのである。

「総合優勝には往路優勝が絶対条件だ」と両角監督は語っていたが、それには届かなかった。しかし、トップの東洋大との差は114秒。復路で逆転しての総合優勝の可能性は、大きく膨らんだ。

 6区の中島怜利(3年)は昨年区間2位で、下りにめっぽう強い。58分台前半で入ってくれば、東洋大との差をかなり詰めることができる。

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