すべては打倒・青学大のため。東海大が刷新した本番までのアプローチ (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun,AFLO

―― チーム練習を押し通すのではなく、選手の自主性に任せると?

「そうです。勝つためには『チームが成熟する』『選手が自立していく』という方向に向かっていかないといけない。究極は、指導者と選手がフラットになって、お互いに考えていることを話し合える関係になれればいいかなと思っています」

―― 選手の要望を受け入れることで、チーム内にどんな変化が生じましたか。

「僕や両角監督に対して、話しにくい雰囲気がなくなって、率直に話ができる、風通しのいいチームになってきましたね。ただ、選手の話ばかり聞いてしまうと、僕らの軸がぶれてしまうので、必要なチーム練習はしっかりこなすように説明しています」

 自主性に任せた調整は、選手に概ね好評だ。基本的に駅伝はチームスポーツだが、戦うのは個人である。コンディションや練習量が個々に異なるのは当然であって、無理にチーム練習を押し込むと選手によっては大きな負担となることもある。そこで、ある程度選手の自主性を尊重し、本番に向けて各人が自分の体と相談してピーキングしていくというスタイルに変換したのだ。

―― 本番までのアプローチ、練習メニューも変更したと聞いています。

「まず記録会などのレースには出ず、箱根の練習をしていくことにしました。関東学連記録会や八王子ロングディスタンスなどの記録会に出ると、その前の1週間が調整期間になり、レース後も1週間ほどリカバリー期間が必要になります。結局、2週間いつのも練習から離れてしまうんです。それまでは疲労をとってから、箱根駅伝の距離を走っていたのですが、うまくいかなかった。練習内容も、昨年はスピード練習も混ぜてやっていたのですが、ここに来てスピードが消えることはないので、30キロ走とか長い距離をメインに走り込みました」

―― 昨年のこの時期はまだ追い込んでいましたが、今年はどうですか。

「ここからは疲労を抜いていくことが大事になります。タイムを求めてトレーニングすることはないですね。逆にタイムを出さないように『抑えろ』という話を選手にしています。『レースに出たい』とか『スピードを出したい』とか、そういう欲を箱根本番まで我慢して爆発させるイメージです。このやり方がハマるかどうかは箱根でしか検証できませんが、僕たちが考えていることと選手の反応がリンクしているので、順調にきていると思っています」

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