またも神野大地を襲った腹痛の悲劇。来年3月の東京マラソンは正念場だ (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Kishimoto Tsutomu/PICSPORT

 1年前の同レースで腹痛を起こし、その後、今年の東京マラソンでも発症し、万全の対策を敷いたベルリンマラソンでは過去にない激しい腹痛のために途中棄権してしまった。スタッフとともに対策を練り、腹痛を意識しないように挑んだが水泡に帰した。

 しかも、さらなるアクシデントが神野を襲った。

「結果的に32キロで腹痛が起きてしまって、そことの戦いになってしまいました。あとは3738キロぐらいで体が動かなくなってしまって......。ちょっと寒気がしてきて、エネルギー切れなのか、低体温症なのか分からないですけど、ほとんど体が動かなくなってしまいました」

 レース後、体が硬直し、「寒い」と漏らしていた神野の様子をれば、それが低体温症であることはすぐに理解できた。

 ふたつのアクシデントが起これば、まともには走れない。そのダメージの大きさは、タイムに如実に表れていた。

 25キロから30キロまでの5キロを1556秒、腹痛が起きた30キロから35キロまでは1637秒、そして低体温症になった35分から40キロまでは2025秒に落ち込んだ。テレビに映し出された神野の姿は両手で脇腹を押さえて必死の形相で走る痛々しいものだった。

 1年前と変わらない現状に「なぜ、また......」という疑問が拭えないが、神野は何もしていないわけではない。今回の福岡国際に当たっては炭水化物の食事制限を始め、給水のスポーツドリンクにまで気をい、体の負担にならないように調整されたものを使用した。だが、起きてしまったのだ。

 そして、腹痛は消えなかった。

「最後の10キロは腹痛との戦いでした。正直、何が悪かったのか明確にわからないですけど、これも力不足だと思うので......。しっかり練習をして、まだチャンスがあると思うので、がんばっていきたいです」

 神野は、声を絞り出すようにそう言った。

 2時間1928秒で29位、優勝は同期の服部が2時間7分27秒で飾った。神野は、ワイルドカードを手にすることはできなかった。

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