箱根で打倒・青学大へ。東海大は弱点「ロング区間」をどう克服するか (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Kyodo News

 森田と並走している時の湊谷はいつもおりのように見えた。だが、地力に勝る森田は湊谷の顔をうかがい、スパートのタイミングを計っていたという。

 森田が9キロから前に出ると、アッという間に湊谷との差を広げた。10キロ地点で20秒差になった。

「なんとかアンカーまで20秒差でついていってほしい」

 両角監督は7区途中のポイントでそう言ったが、7キロ以上も残して20秒差がつき、早くも限界の秒差を越えた。森田は時折、通り沿いにある店のガラスで自分のフォームを確認しながらスピードを上げていく。自信に満ちた余裕の走りを見せ、湊谷の姿がどんどん小さくなっていく。15キロ地点では1分24秒もの差がついた。湊谷は、わずか5キロで1分以上もの差をつけられてしまった。

 レースは、ここで決した。

 レース後、湊谷は悔し泣きにくれた。

「1番で襷をもらったので、そのまま1番で渡したかったんですけど、(相手が)見えない状態にしてしまって......本当にそこは悔しいですし、申し訳ない気持ちです。2年生、3年生が頑張ってくれているなか、箱根で勝つためには自分たち4年生の出直しが必要かなと思っています」

 結果的には湊谷の区間で青学大に逆転されたが、この敗戦の要因は湊谷個人ではなく、ロング区間が苦手という東海大に潜む弱点にある。

 両角監督も「最後の2区間でうちの弱さが出た」と、厳しい表情でそう言った。

「チーム的に長い距離が苦手で、うちは森田くんとか青学さんの突出した力に最後、対抗できなかった。7区まで11秒差ありましたけど、こうなってみるとセーフティリードにはならず、逆に2分以上の差をつけられてしまった。結果は2位ですけど、完全に力負けです」

 これで3大駅伝のうち出雲に続き、全日本も失った。青学大に3冠達成の王手を掛けられたわけだが、むしろ箱根駅伝は楽しみが増えた。

 出雲では青学の影さえ踏めず、優勝争いにまったく絡めなかったが今回は7区途中までトップを維持し、優勝争いを演じた。それは、ひとえに選手の力が出雲の時よりも向上してきたからである。とくに前半3区間を走った西川、關、館澤は調子が上がっている。

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