全日本2位の東海大に一筋の光明。エースの復調と駅伝デビューの健闘 (4ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Jiji Photo

 館澤は、1キロを3分台に乗せなければ逃げ切れると確信して走っていた。

 出雲の時は体を十分に絞り切れておらず、走りが重かったが、この日の館澤はリズムよく、力強く走り、青学大を突き離していった。

 途中、館澤の走りを見た両角監督は、「ここまでは順調ですね」と笑みを見せた。

 館澤は鈴木にリベンジを果たし、今回距離が変更になったものの、3年連続で3区区間賞を獲得。青学大に37秒差をつけて4区、西田壮志(たけし/2年)に襷を渡した。

 4区、西田は駅伝デビューとなった。

 長距離に強く、3月の学生ハーフでは3位に入り、全日本大学駅伝前の日体大の競技会では10000mで2858秒の自己ベストを出し、好調を維持していた。

 一方、青学大の4区は林奎介(けいすけ/4年)。今年の箱根駅伝では7区を走って区間新を出し、大会MVPに輝いた。駅伝デビューと箱根MVPではどう見ても分が悪い。だが、そんな前評判を覆す粘りの走りを西田は見せた。

「初めての駅伝ですが緊張はなかったです。むしろ楽しみでした。何も考えず、自分の走りに集中して、後半に粘るというプランでした」

 最初の1キロは2分54秒で入り、ペース的には悪くなかった。

 だが、6キロ地点で林との差が31秒になり、8キロ地点では27秒に詰まった。この時、西田の左足には違和感が起きていたという。

「大会前に左アキレス腱をちょっと痛めて。でも、走るからには痛いとか言っていられないんで、気持ちでいったんですが7キロぐらいから足が思うように動かなくなって......。沿道の人から『後ろが近づいてきているぞ』って言われて、このままじゃダメだ。ラストは動かさないといけないって思って、もう必死で走りました」

 西田は、必死に腕を振り、「抜かされてたまるか」という意地だけで走った。林に8秒ほど詰められたが、26秒の差をつけて5区の鬼塚翔太(3年)に襷を渡し、西田は自分の役割を十分に果たした。

 ここまでは東海大にとって理想的な展開だった......。

後編につづく

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