57泊58日のケニア武者修行。
神野大地はどでかい収穫を得た

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro

「今までよくて14.1ぐらいで大学の時は13.5で自己ベストを出せる選手だったんです。大学には17.8とかの選手もいて原監督に『ヘモグロビンは高い方がいい』って言われていました。ケニアで2回、オランダで1回、ヘモグロビンの検査をしたんですが、最終的に15.9まで行ったんです。高地に行くと脱水症状でヘモグロビンの数値が上がりやすいんですが、自分は脱水症状をクリアーにして数値が上がったので一時的なものではなく、練習の成果として上がったのが確認できた。自分にはケニアという環境が合っていたというのが分かったし、それをデータとして証明できたのはよかったです」

―― ケニア合宿は、プラスになった。

「ケニアの選手たちの練習スタイルを学べたし、一緒にやることができた。ケニアに行って本当によかったし、あそこにいないとダメだなって思わされました。このまま日本で練習しているだけじゃ離されていく一方だなって痛感しましたね。強い日本人選手が出て来たなって思ったらオランダで練習していましたとか、みんな海外に拠点を置いているじゃないですか。ゼーンに『なぜケニアで練習しているの』って聞いたら、『17歳の時、福岡のクロカンでケニアの選手を見て、ケニアに行ってみようと思い、行ってみたらケニアに住まないと絶対に彼らに勝てないと思って、もう11年住んでいる』って言っていました」

―― もしかしてケニア移住を考えているんですか。

「住んじゃおうかなって思います(笑)。ただ、日本でもやらないといけないことがあるんで、ずっとは無理ですけど、1年のうち半年はケニアに拠点を置こうかなと本気で考えています。そのことに気づき、やろうと決断できたことも大きな収穫ですね」

 神野はケニアの環境に魅了され、本気でケニアに練習拠点を移すことを考えている。すでに2019年1月から2カ月ほどケニアに行く予定だ。そういう決断を下す覚悟までさせたケニア合宿だが、今回の合宿の決算となったのが9月19日のベルリンマラソンだった。

 順調にケニア合宿を終え、2週間前にオランダに入って調整した。

 果たしてベルリンマラソンは、神野にまさかの事態が起きたのである。

(つづく)

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