57泊58日のケニア武者修行。神野大地はどでかい収穫を得た (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro

 ケニアを走っていて神野が目にしたものはランニングが活況である一方、考え込んでしまうような貧富の差だ。神野が練習していたグループは、ゼーンの合宿に参加できる経済的な余裕がある選手とケニア人でも海外のレースに参戦したことがある選手ばかり。シューズもウエアも揃っているが、イテンで普通に走っている多くの選手はシューズがボロボロでウエアが毎日同じで薄汚れていたり、上下バラバラだったりした。

―― ランナーも貧富の差が激しい。

「普通に走っている選手はほとんどがボロボロのウエアで、シューズも僕がめちゃ履き潰したようなシューズを彼らは大事に履いて走っています。大会に出ていない選手はシューズとか高いので買えないんですよ。ケニアでは上下ウエアが揃っている選手は強い選手という証拠なんです」

―― でも、そのハングリー精神がアフリカの強さでもある。

「僕がグループ練習していた以外の選手でも強い選手がたくさんいました。でも、ケニア人で試合に出ているのは全体の10%ぐらいで、残りの90%は金がないので試合に行けず、給料もない状態で試合に連れていってもらえるエージェントに目をつけてもらえるまでひたすら練習している。僕はプロとして覚悟を持って練習しているけど、彼らは何を得られるのか分からないまま自分の人生を賭けて走っている。そこにグッときましたし、その精神力がケニアの強さの1つだと思いますね」

 神野は58日間のケニア合宿で練習を休んだのは股関節痛が出て大事を取った3日間だけだった。それ以外はほぼ順調にメニューを消化した。練習の成果はもう少し後に出てきそうだが、はっきりと数字になって成果が表れたところもあった。

―― 58日間いて体に変化はありましたか。

「僕、もともとヘモグロビンの数値がよくなかったんですが、それが上がりました」

 ヘモグロビンとは人間の血液中に含まれているたんぱく質の一種。肺から全身へと酸素を運搬する役割を担っている。その数値が低いと酸素運搬量が減少し、疲れやすくなり、パフォーマンスの低下につながってしまう。

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