日本記録更新の大迫傑はシカゴマラソンで日本人らしからぬ走り方だった (2ページ目)

  • 酒井政人●文 text by Sakai Masato

帰国後、取材に対応する大迫。左はレースで履いたものと同じ「ズーム ヴェイパーフライ 4% フライニット」(写真提供:NIKE)帰国後、取材に対応する大迫。左はレースで履いたものと同じ「ズーム ヴェイパーフライ 4% フライニット」(写真提供:NIKE) 大迫は細長くなった集団の中でうまくペースをコントロールして、リラックスした走りを心がけていたという。中間点の通過は1時間3分04秒。スタート前の予定より30秒以上遅かった。

「もともとそんなにタイムは意識していませんでしたが、頭の片隅で『ゴールタイムは2時間6分半から7分ぐらいになるのかな』と思いました。前半はそんなに脚が動いていた感じがなかったんですけど、逆にそれが後半に脚を残すためにはよかったのかなと思います」

 ペースメーカーがいなくなってからレースが一気に動きだす。25~30kmの5kmは14分27秒。直前の5kmと比べて、タイムが1分以上も速くなった。30kmの通過は1時間29分43秒。トップ集団は9人で、全員がナイキのシューズを履いていた。大迫は少し遅れる場面もあったが、落ち着いて先頭グループに加わった。

「終盤は自分を励ましながら、目先の1マイル、1マイルに集中しました。前のペースがガツンと上がったときに少し遅れましたが、ゲーレンやファラーが詰めようとしたので、それを利用させてもらうなど、うまく他の選手を使って、なるべくエネルギーを消費しないように走りました」

 大迫は30~35kmの5kmを14分31秒でカバー。次の5kmも14分42秒でまとめるも、ファラーのスパートには対応できない。途中、両脇腹を押さえるシーンもあった。

「お腹が痛くなり始めていたので、肋骨を下げるじゃないですけど、少し対処した感じです。それほど鋭い痛みにはならなかったので、なんとか持ちこたえることができました。一番きつかったのは、ファラーがラスト3kmくらいで(ペースを)上げたときですね」

 終盤は小雨が降り、それまで静かにしていた風がランナーたちに向かってきた。大迫は3位争いを繰り広げながら、40kmを1時間58分59秒で通過する。このあたりからようやく"タイム"に対しての欲が出てきた。

「記録が見えてきたので、3位争いの中で勝つというよりは、タイムを意識しました。あと1マイルというところで2時間1分くらいだったので、『日本記録は狙えるぞ』と思いましたね。ただ、向かい風が強くなっていたので、少しでも気を抜くと脚をつるリスクも出てくる。身体の状態とタイムを見ながら、必死に走りました。福岡と同様、ゴール前に上り坂があって、ラストスパートとはならなかったですけど、最後までしっかりと走り切ることができたと思います」

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