出雲駅伝「完敗」の東海大は巻き返せるか。初駅伝組が次につながる好走 (4ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Kyodo News

 レース後、中島の3区起用について両角監督は、こう説明した。

「中島は今シーズン、5000mで13分台を2回出していますし、長い距離の練習もしてきました。早く突っ込めて距離にも不安がないのを考えると、このメンバーのなかでは中島しかいなかった。距離は湯澤も強いんですが、彼はスピードに欠けるので......。配置は間違っていなかったと思います。ただ、今日の彼が本調子ではなかったということです」

 鬼塚を使えず、關も本調子には程遠く、館澤はまだ長距離に対応できていない。控えに回った主将の湊谷春紀(4年)は長距離タイプで、高田凜太郎(3年)は駅伝未経験だ。3区のエース区間を走れる選手は中島しかおらず、選択の余地がなかったところに東海大の苦しい台所事情が見て取れた。

 そうしたチーム状況では、戦力が豊富で「出雲プロジェクト」の強力な布陣で挑んできた青学大や、昨年の箱根組を軸にベストメンバーを組んだ東洋大と互角に戦うのはそもそも難しかった。両角監督は厳しい表情でこう話した。

「青学大は選手層の厚さから隙がないと思いましたし、東洋大は粘り強さというチームカラーをしっかり打ち出した。逆にうちはスピード駅伝でありながら、スピードの強さが欠けていた。最低限3強のなかに食い込めたことはよかったですが、優勝争いすらできなかった。そういう意味では現時点での青学大との力の差はかなり大きいなと思います」

 出雲の敗因はこのレースだけにあるのではなく、この大会に至るまでの経緯、トラックシーズンから夏合宿にかけてのチームの流れにもある。

 夏合宿では、箱根に勝つために長い距離を走るなど例年よりもハードなトレーニングを課した。だが、それがうまくフィットせず、故障者も出て、結果として「夏合宿はうまくいなかった」と両角監督は述べた。

 夏合宿前にすでに故障していた選手もいたが、合宿中も故障者が出て、選手のコンディションを維持できなかった。それでも今大会に向けてかなり調子を整えてはきていたが、最終的に全員のピーキングを合わせることができなかった。「夏合宿を制した者が駅伝を制す」とよく言われているが、その意味では東海大はスタート前から躓(つまず)いていたとも言える。

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