神野大地、母の反対を押し切りプロ宣言。安定を捨ててまで目指すもの (3ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun

「2カ月で2分30秒もタイムを縮めることができたのはよかったです。でも、やっぱり今の状態のままだと五輪には届かない。このレースで日本記録を更新した設楽(悠太/Honda)さん、日本人2位の井上(大仁/MHPS)さん、それに大迫さんと強い選手がどんどん出てきている。すごい危機感がありました。

 今までもフィジカルとかみんなと違う練習をしてきたんですが、それにプラス何かを変えて劇的な力の変化を求めていかないといけない。それで東京マラソンが終わった夜、両親と食事をした時、自分の決断を伝えました」

 両親には福岡国際が終わった際、プロ転向について一度、話をしていた。その時は、「このままコニカで」というのが両親、特に母の想いだったという。青学大にいる時からコニカに行きたい気持ちを両親に話し、それを実現した。親としてみれば、走りながら安定した生活を保障されている実業団の環境がランナーにとって最上であり、そこをやめて不安定な環境に飛び出すことのメリットがあまり理解できなかったのだろう。引退後の人生も考えると、リスクを息子に負わせたくないと思うのは親として当然の気持ちである。

 だが、東京マラソン後の食事の席で、神野は改めて自分の今の気持ちと今後のプランについて説明した。覚悟を決めた息子の言葉に、母は「大地がそこまでいうなら、お母さんは応援するよ」と言ってくれたという。

――東京マラソン後にコニカミノルタに退社の意思を伝えた。

「コニカでの2年間で、僕は目一杯成長できたと思います。だからこそ次のステージでやりたいという気持ちが芽生えてきましたし、もう一歩前に進めるんだと思っています。やめる時も僕の意志を受け止めてくれて、後押しをしてくれました。企業によっては、なかなかやめさせてくれないというのも聞いていたので、そこは本当にありがたかったですね。だからこそ、ここから結果を出して、コニカに恩返しをしたいと思っています」

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