日本陸上界に、あの「メダル候補」が2年9カ月ぶりに帰ってきた (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

 しかし、冷静に見れば50kmは昨年の世界選手権で圧勝した世界記録保持者のヨハン・ディニ(フランス)や、リオ五輪金メダルのマテイ・トート(スロバキア)や銀のジャレド・タレント(オーストラリア)といった実力者は出場していない。日本勢も昨年の世界選手権で3位になった小林快(ビッグカメラ)は歩型違反の警告カードを3枚出され、この大会で採用された2分間のピットレーン入りのルールに救われて再開したものの、結局はレースを中止している。

 また、20kmも日本選手権4連覇中でエースとしての役割を果たさなければいけない髙橋が、警告3枚でピットレーンに入って18位。リオ五輪7位で昨年の世界選手権にも出場した松永は警告2枚で31位と、力を出し切れない選手もいた。

 だからこそ世界記録保持者・鈴木雄介の復活が待たれている。

「今は世界で金メダルを獲るというのもキツいですが、日本の中で代表権を獲るのも大変になっているので焦りは大きいです。今年2月の日本選手権は1時間17分台に3人が入ったので、『何をしてるんだ、お前ら!』と思いましたね。自分が割り込むためのレベルをどれだけ上げてくれちゃってるんだって(笑)」

 そんな日本競歩界の状況に焦りを感じながらも、それを復活への力に変えている。

「そこを目指す立場になれたというのは、逆にいいことなのかとも思いますね。日本選手権で争って勝てば世界の金メダルも見えてくるので、以前より金メダルをイメージしやすくなりました。今はもう世界記録を出した時の鈴木雄介ではないし、5000mが20分06秒の鈴木雄介ですから......。

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