東海大・箱根のエースたちが、この時期に追求する「超スピード勝負」 (3ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun  photo by AFLO

 きっとその頃には、ラストスパートのフォームの悩みも解消されているだろう。

 故障から順調に回復しつつある姿を見せたのは、阪口竜平(3年)だ。

 2月からオレゴンで館澤、關颯人(せき・はやと/3年)、鬼塚翔太(3年)と4人で合宿をしながら練習に取り組んだ。3月30日、スタンフォードのレースで3000mSCを走った時、左大腿部に痛みが走った。初めて感じる痛みに戸惑い、レースは9分1秒というタイムで終えた。帰国後、左大腿骨の疲労骨折が判明するのだが、3月15日ぐらいから痛みが出ており、30日のレースの時には「すでに折れていた」という。

 4月は故障のため、負荷のかかるポイント練習はこなせず、ウエイトやワットバイクをしながらリハビリに努めた。4月末の東海大記録会の3000mに調整の一環として出場し、レースに復帰。5月5日のゴールデンゲームズinのべおかでは5000mに出場し、13分56秒12で14分を切る走りを見せた。こうして関東インカレに向けて急ピッチで調整している最中で、今回の試合を迎えた。3000mのタイムは8分2秒。序盤から先頭集団に位置し、とても故障明けのレースとは思えない走りっぷりだった。

 しかし、阪口は不満げな表情でいた。

「まだ、故障明けなので......。鬼塚は?」

 7分57秒――。タイムを聞くと、ちょっと悔しそうな表情を見せて、言葉を継いだ。

「積極的なレース展開は自分の持ち味なんで、そこはいつも通りなんですけど、最初の800mを2分3、4秒でいったので、そこで足を使ってしまって......。5000mで13分20秒台を出すには(3000mで)7分55秒ぐらいで、余裕を持って走れるぐらいにならないといけないんです。8分2秒だと13分30秒台を切るのは難しい」

 阪口が今ひとつタイムに納得していないのは、2月のハスキークラシックで7分51秒というタイムを出しているからだ。故障明けとはいえ、そのタイムにできるだけ近いタイムを出したいと思うのは、ランナーの心理として当然だろう。そのレースの感覚が今もしっかりと体に残っているだけに、なおさらだ。

「あの時は、『7分52秒の世界陸上の標準記録を切れ』って監督に言われていたんです。実際、調子がよくて、7分52秒を切れそうだなって感覚がアップの時からありました。その力を維持してコンスタントに走ることができれば、(5000mで)13分20秒台も見えてくると思うので、その状態に近づけるように、その時の感覚を大事にしていきたいですね。ただ、それを意識しすぎてしまうと過去の自分ばかり見てしまって、今の自分を見失ってしまうので、そこは気をつけてやっていきたいと思います」

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