東海大・箱根のエースたちが、
この時期に追求する「超スピード勝負」

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun  photo by AFLO

 廣瀬大貴(大阪ガス)らが先頭を走っていたが、館澤は外国人選手の背後にポジションをキープしていた。そして、ラスト1周の鐘が鳴ると選手の流れに勢いがついた。ライアン・グレグソン(オーストラリア)がグイグイとスピードを上げていき、トップに立つ。館澤は第3コーナーで小林らを抜き、一気に5位に上がった。残り200mでの懸命なスパートで日本人だけには抜かれないという意地を見せた。

「レース中にプランを変えて、まぁ予想に近い走りができたと思います」

 館澤は、ホッとした表情を見せた。

 ちょうど1カ月前、兵庫リレーカーニバルで1500mを2位に終わった時は、精神的に落ち込んだ。1500mの第一人者として追われるプレッシャーに苦しみ、レースに出る怖さを感じた。また、当時はラストスパートのスピードを高めようとして、ストライドを伸ばして走る従来のファームからピッチを刻む走り方に変えようとしていた。ところが今ひとつ、自分の中でしっくりこなかった。館澤のなかで、それがベストな選択なのか迷いが生じていたのだ。そのため、兵庫リレーカーニバルでは最後、持ち前のスピードを活かすことができず、小林に競り負けた。

 あれから1カ月、自分の中でひとつ区切りをつけたという。

「自分は頭がよくないので、難しく考えるのはやめました(笑)。フォームを変えるのは時間がかかるので、今の状態で体が動く方で日本選手権までやろうと。実際、そう思って練習に取り組んでからはラストスパートのスピードが上がってきた感じがありました。トラックシーズンが終わるまではこのままでいき、駅伝シーズンに入って、来年のトラックシーズンに入るまでの間に決めればいいかなと思っています」

 そう語る表情は非常に明るかった。ただ、以前とまったく変わっていないわけではない。従来のストライドを伸ばすフォームから歩幅を修正し、実際にはピッチを上げていくやり方に変化しつつある。このまま関東インカレ、そして6月の日本選手権で2連覇を達成することができれば自信もついてくる。目標としている3分30秒台も見えてくるはずだ。

「同級生の舟津(彰馬/中央大)が3分38秒を出した時は、まだ自分にはそんな力はないなって思っていたんですけど、今日(舟津に)勝って、同級生が出しているんだから自分も不可能ではないと思いました。まだまだ力不足ですけど、焦らずに30秒台をまずは狙って、その次は日本記録も超えられるようにしたいですね」

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