桐生祥秀が自分でもビックリ。今季初戦の「大失速5位」は良い兆候? (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 昨年の日本インカレの前は、脚の状態が悪いなかで200mを意識した練習をしていたところ、100mで9秒98を出したこともあり、今季は200mも視野に入れていこうという意識も生まれた。

 織田記念が行なわれる広島は高3で10秒01を出したように、好記録が期待される高速トラックだ。そこに出場すれば、当然のように周囲の目は、2度目の9秒台のみに集中する。専門外とも言える200mからのシーズンインならば、そんなうっとうしさから逃れて、精神的にはリラックスした気持ちで走れる。そういう状況を作り出したかったこともある。

 3日の昼に行なわれた予選は、土江コーチが言う"前半を少し抑えた走り"を見せた。ほかの選手をあまりリードすることなく直線に入った桐生は、そこからスルスルと抜け出したが、ラスト30mは流して外側のレーンの染谷佳太(中央大)にかわされ2位。それでも追い風1.1mで全体2位の20秒69というまずまずのタイムだった。

「去年の9月以来、半年ぶりの個人レースだったので、試合勘というか、とりあえず決勝に進めればいいという気持ちで走りました」

 一方、土江コーチは別の考えを持っていた。桐生は試合直前に風邪気味で咳き込むようになり、3日前まで声が出ない状態だった。改善はしたものの、どのくらいで走れるかという判断はついていなかった。

「実際は3月から試合に出た去年に比べると、スピードを上げきれていないというのもあり、状態自体も2カ月くらいは遅れているので、正直今回は『どこまでできるかな?』という気持ちでした。だから、練習を見たあとで安心したという言葉を出したのは、そういう部分がありました。予選は、状態を確かめるために前半を抑える走りをさせました」

 予選で20秒69を出せたこともあり、決勝は前半からしっかりいってみようという形になった。

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