東海大、新シーズンは箱根駅伝を含めて「長距離5冠」を獲りにいく (4ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun

 その意識はレース展開にも見られた。西田は相手の背後についていくのではなく、終始自分が前を走るという攻めのレースをした。

 両角監督もその姿勢を高く評価していた。

「西田はよく攻めたと思います。彼には箱根5区を期待していますが、あそこは1人で走る展開が多いので、ついているだけの走りだといい記録が出にくいし、いい走りをするのも難しい。西田もそこはわかっているようで、今日は攻めの走りができていましたし、唐津10マイルでも同様に前に出て引っ張っていた。西田にとっては、いい形で冬のトレーニングを終わることができたと思います」

 いい形でトレーニングが進んでいるのは、西田の体つきを見てもわかった。昨季は全体的に線が細かったが、上半身が逞しくなっていたのだ。「身体、大きくなった?」と聞くと、西田は嬉しそうに「でかくなりました」と笑顔を見せた。

「昨年から続けたウエイトのおかげです」
 
 西田は自信ありげに言う。西出コーチは「いや、まだまだです。簡単に(筋肉が)ついたら苦労はしないんで」と厳しいが、本人は手応えを感じている。

「体重とかは変わっていないんですが、筋肉はつきました。それで走りも変わってきています。これからもごはんをたくさん食べて、走れる筋肉をつけていきたいです」
 
 ウエイトトレーニングの導入は、確実に選手の力を伸ばしている。館澤はその成功例で、1500mを走ったかと思えばハーフも走り、箱根8区でも激走するなど、中・長距離の両輪で強さを見せている。

 西田はそういう先輩に負けたくないのだ。

「自分は練習を積まないと走れないんで、2年になってもそのスタイルは貫いていきます。自分は山を走るために東海に来たんで、山だけを狙っていきます。そのために長い距離をしっかり走って練習して力をつけたい。5区を走りたいという気持ちは誰よりも強いですし、誰にも負けたくないんで」

 そういう気持ちを強く持つことは、競技者にとって非常に重要だ。最後、1000mの勝負になった時、何が勝敗を分けるのかといえば、古くさいようだが気持ちなのだ。おちゃらけた雰囲気もなくなり、西田は今シーズン大化けしそうだ。

"気持ち"で言えば、中島もある相手を意識して、負けられないという思いで走っていたという。レースには中島と同じく6区を走った青学大の小野田勇次(3年)が出場していたのだ。

「後ろに小野田さんがいたんですよ。平地ですけど、ここで勝っておかないといけないと思いました。日頃から自分がレースに勝って、小野田さんに『あいつは強い』というイメージを植えつけることができれば、箱根でも優位に戦えると思うんです。箱根は実力も大事ですが、精神的なものが大きいんで。そのためにも今日は勝ちたかったんですけど、最後にやられました」

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