女子マラソンにまた新星。
関根花観は「安全運転」で好記録出ちゃった

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

初マラソンで苦しい表情を見せながらも、日本人1位でゴールした関根花観初マラソンで苦しい表情を見せながらも、日本人1位でゴールした関根花観 気温が高い中でのレースだった1週間前のびわ湖毎日マラソンとは違い、3月11日に行なわれた名古屋ウィメンズマラソンは、スタート時の気温が8.3度で風も秒速0.3mという好条件に恵まれた。ペースメーカーの走りも安定し、好結果が期待できる滑り出しだった。

 5kmを過ぎてから、それまで17分03秒だったペースが16分48秒に上がると、2時間23分47秒の記録を持つ清田真央(17年ロンドン世界選手権代表/スズキ浜松AC)が後ろに下がり始めて、9km手前では完全に遅れてしまう。

 2015年北京世界選手権代表となった後の低迷から復活してきた前田彩里(ダイハツ)も、10kmを過ぎてから完全に後退。

 また、2016年のこの大会では2時間23分20秒で走りながらも1秒差で田中智美(第一生命)に敗れて、リオデジャネイロ五輪出場を逃した小原怜(天満屋)も22kmで後退と、上位を期待された選手が中盤までに次々と消えてしまう予想外の展開になった。

 だが、そんな日本勢を救ったのは初マラソンの関根花観(はなみ/日本郵政グループ)だった。

「MGCの権利(※)は絶対に取りたいと思っていましたが、監督からもタイムは重視するなと言われていたので、ペースメーカーがいるところまでは、できるだけエネルギーを使わないで楽につけることを考えて走っていた。30kmからが勝負だと言われていたので、そこからどこまで粘れるかと思っていました」
※マラソングランドチャンピオンシップの条件は、日本人3位以内なら2時間28分00秒以内。4~6位の場合は2時間27分00秒以内

 関根はリオ五輪1万m出場の実績を持つが、ハーフマラソンの経験はなく、いきなりのフルマラソン挑戦だった。試合後の言葉の通り、集団の前方で安定した走りをして、中間地点は1時間11分32秒で通過した。

 ペースメーカーが外れた25km過ぎからは、2時間20分53秒の記録を持つバラリー・ジェメリ(ケニア)が30kmまでの5kmを16分15秒に上げる仕掛けを見せたが、「本当だったらついていきたいと思いましたが、今の自分では実力的にもまだまだなので、ついていったら落ちてしまうと思って自分のペースを守った」と自重じて、その間の5kmを16分56秒と抑えた。

 30kmを過ぎてからは、疲れが出てきたが、それでも35kmまでを17分00秒で走り、40kmまでも17分09秒でカバー。終盤の苦しそうな表情を見る限り、2時間23分台後半まで落ち込むかとも思えたが、ラスト5kmも17分02秒で抑える粘りで、初マラソン日本歴代4位の2時間23分07秒でゴール。順位では3位に入った。

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