神野大地の初マラソンにみる「ハム&臀筋型と大腿四頭筋型」2つの走法 (4ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text by Sato Shun photo by Nakanishi Yusuke/AFLO SPORT

「福岡では思うように適度な前傾ができていなかったので、このまま前傾しないフォームで押し切るという策もありますが......。1月7日から始まるニュージーランドの合宿での走りを見て、神野と相談をした上で決めようと思っています」

 神野と中野は昨年の春から二人三脚でやってきた。1年の目標として福岡国際マラソンでの優勝、MGC(マラソン・グランド・チャンピオンシップ)出場権の獲得を掲げていた。今回の結果を踏まえて、中野が考える神野の現時点での完成度はどのくらいなのだろうか。

「まだ、私の思い描くところの20%ぐらいです。ひとつひとつ階段を登ってきましたけど、もうちょっと登れたかなというのが本音です。筋肉をしっかりとつくったけど、使えるようになっていない。まぁ、思い通りにポンポンといくことはあまりないんですが、でもプラスにはなっています。福岡も弱いところが明確になったことを考えれば、意味があるレースだったと思います」

 その福岡では日本人トップの大迫傑(2時間7分19秒)と5分以上の差をつけられた。中野は、この差については、どう感じているのだろうか。

「今の神野が持っているフィジカル、マインド、能力をフルに出すことができたらイケると思います。ただ、それをどうしたら引き出すことができるのか。何か新しいトレーニングが必要なのか、メンタル(トレーニング)をやるべきか......。力を引き出すために何が必要なのか今はまだちょっとわからない。神野もあれだけ差をつけられて悔しいと思いますが、大迫選手にあって自分には足りないものが何かっていうのを考えてほしいなと思いますね」
 
 中野は少し厳しい表情で、そう言った。卓球の福原愛など、ひとりのアスリートを8年間以上見てきたケースも多くあるが、それでも未だにわからないことがたくさんあるという。神野のことも十分理解しているわけではない。「そこは陸上専門や神野専任ではないトレーナーの弱みでもある」と中野は言う。今後はコニカミノルタの磯松大輔監督とももっと話をしながら指導を仰ぎ、神野の力を引き出す術(すべ)を模索していく。

(つづく)

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