神野大地、苦しみの初マラソンにも
「大迫さんを越えていかなければ」

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun

 それは20kmの給水地点だった。

 スピードを緩めて給水テーブルにアプローチしていった。これまで通りテーブルの一番手前にあると思っていたが、神野の青いボトルはテーブルの角の奥に置かれていた。焦って手を伸ばした瞬間、ボトルに当たって倒れてしまい、キャッチすることができなかったのだ。

「取り損ねてヤバいって思いましたね。もうヤバいヤバいってなって、とにかくゼネラルを取ることしか頭になかった。もしマラソンの経験があり、冷静なレース運びができていたら先頭集団での自分の位置を考え、ここでの給水を諦めて、次って考えることができたと思うんです。でも、給水することに必死でゼネラルを取った時は、もう先頭集団から4秒ぐらい遅れていた。

 しかも、その頃、足にマメができ始めていて前に踏み込めない状態だった。運が悪かったのもありますが、そういうところに経験のなさが出てしまい、先頭集団から離れてしまった。腹痛を乗り越えた後すぐだったので、本当に痛いミスでした」

 この時、神野の足にも異変が起きていた。

 初マラソンに向けてのシューズ選びは非常に難しかった。ソールの厚いタイプでいくのか、それとも薄いタイプでスピードを重視していくのか。最終的にレース2週間前の練習で決める予定だったがアキレス腱痛が発症し、シューズを試すことができなかったのだ。

 結局、これまでのフィーリングでソールの薄いシューズを選び、ソックスは30km以降、摩擦でマメができる可能性があったので、すべり止めが前後に小さく付いているタイプを選択した。しかし、実際は予定よりかなり早くマメができてしまい、走りに大きな影響が出てしまった。

「マメでスピードが落ちるとかはなくて、このくらいの痛みなら我慢できるだろうって思って走っていたんです。でも、今、振り返って考えてみると、マメのせいで足の裏が気になって、いつもと違うフォームになっていたんです」

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