箱根にはない緊張感。神野大地が「ほろ苦い初マラソン」を詳しく語る (3ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Kyodo News


 また、水曜日に神野の足を確認した中野も「大丈夫」と太鼓判を押してくれた。

「何もなかったということはないと思うんですが、今思えばメンタル的なものが大きかったのかなって思います。このままレースに出られなくなったらどうしようとか、いろんなことを考え過ぎて、いつもは1日で治っていた痛みにすごく敏感に反応してしまっていた。その時、中野さんに『大丈夫だ』って言ってもらえたことがすごく大きかったですね。今まで中野さんが大丈夫って言ってダメになったことはなかったので」

 高橋尚子の言葉にも気持ち的にずいぶん救われたという。

「福岡の前に高橋さんとお会いする機会があって、その時、高橋さんが『私もレースの2週間前に肉離れをして1週間まったく走れなかったけど、次の1週間で調整して勝ったから大丈夫だよ』って言ってくださって。『そうかぁ、最後はいい方向に転んだんだ』って思って、ちょっと気持ちがラクになりました」

 不安が解消され、気持ちが落ち着き、レースに向かって体の調子が上がってきた。すると痛みが完全に消えた。

 その一方でレースの日が近づくにつれ、箱根駅伝の時にもなかった強烈な緊張感が神野の神経を高ぶらせた。その影響で寝ることができなくなったのだ。

「今までレース前に寝られないことなんてなかったんです。箱根の時でさえもよく寝れたけど、今回は1週間前から緊張感のせいか、寝られなくなりました。大学の時は寮にいて廊下からいろんな人の声が聞こえてきたり、食事もみんなで摂るんで緊張を忘れられる瞬間があるんですが、実業団だとトレーニングや移動をはじめ、部屋でもひとりでいることが多いんですよ。ひとりだと42.195km走り切れるのかなとか、給水大丈夫かなっていろいろ考えてしまうことが多くて......。それに注目度も高かったので、ほんと今までにない緊張感を味わっていました」

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