大迫傑が語る異次元のマラソン。
「走りの感覚はレースごとに忘れる」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 村上庄吾●写真 photo by Murakami Shogo

「だから、ボストンの時にどんな走りをしたかというのも、すぐに忘れるようにしていました。もちろん練習ではタイムを追うことも大事で、『このタイムでできたから』と自信になります。でも、レースになったら3分ペースには別にこだわらない。1kmごとのタイムも気にしないで勝負に徹するだけですね。

 今後出るマラソンに関しても、どういうレースに出たいというこだわりはありません。コーチと話して『東京五輪へ向けてアップダウンの多いボストンをもう一度走っておいた方がいい』となればそうするし、『暑いところを一回経験しておいた方がいい』となればそういうところを選ぶと思います」

 陸上競技の本質は、一緒に走る者の中で一番早くゴールすることを競い合うものである。大迫は、周囲が作り出すマラソンの固定概念にとらわれることなく、自然に距離を伸ばして、マラソンにたどり着いた。だから、毎回自然な意識でマラソンを走れているのだろう。

「ボストンも福岡も、30km過ぎからはひとりで走りましたが、そこでラップタイムを落とすことなく走れたので、その粘り強さは自分の強みだと思う」という彼のニュートラルな姿勢と考えが、彼の長所をより引き出している。

 今後もそのブレない信念を持って走る大迫に期待したい。

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