大迫傑が語る異次元のマラソン。
「走りの感覚はレースごとに忘れる」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 村上庄吾●写真 photo by Murakami Shogo

「日本がダメだというようなネガティブな考えだったわけではなく、ただ目の前にすごくいいチームがあったから行っただけです。そこで自分のどこを伸ばすかというのもなく、とりあえず、そこへ行ってみれば何か変わるだろうという興味だったり、競技者として強くなれるのではないかという気持ちでした。

 よくフォームが変わったと言われるけど、そこでフォームを変えようともぜんぜん思わなかったし......。速くなっていったら自然にフォームも変わっていたという感じです」

 大迫は、トラックのスピード感覚をマラソンに活かそうという考えは持っていない。むしろ「僕自身そんなに走りの感覚というのは大事にしていない。例えば1万mで学生新を出した時の走りや、5000mを日本記録で走った時の感覚というのはその時、その瞬間のものでしかないので、僕はすべて忘れるものだと思っています。それにこだわるとか、それを活かしてマラソンをというより、1回それらすべてを忘れてスタートしているという意識です」と話す。

「僕は記憶力やよくないので、前のことを覚えていないんです」と言って笑う大迫は、過去を追うのではなく、レースはすべて新しい挑戦と考えているようだ。常に新鮮な気持ちでレースに臨んでいる。それが彼の強みなのだろう。

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