大迫傑が語る異次元のマラソン。
「走りの感覚はレースごとに忘れる」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 村上庄吾●写真 photo by Murakami Shogo

 マラソン練習を4月まで続ける一方で、大迫がトラックで3度目の世界選手権出場を目指していたのは確かだ。五輪後はトラックレースに出ておらず参加標準記録を突破していなかったため、6月の日本選手権の1万mできっちりと優勝して権利を得ると、7月13日のホクレン・ディスタンスチャレンジでは標準記録突破に挑戦した。

 気温25度で湿度は76%という厳しい条件でのレース。結果は、標準記録を突破できず世界選手権出場を逃した。だがその走りは、条件がよければ27分20秒くらいで走れる力を持っていると評価されるものだった。

「マラソンが終わってから、体にどんな変化が起きるかということもわかっていなかったので、1万mをあそこまで走れるとは思っていませんでした。ただ、マラソンが終わってからトラックを走るという面ではいいこともあったので、これからもうまく両立してやっていきたいと思います。トラックをやる時はマラソンのことを忘れてトラックをやるし、マラソンの時はトラックを忘れてマラソンをやるという風に、ちゃんと切り換えてやっています」

 元々スピードランナーとして注目されていた大迫。早大卒業後は日清食品グループに入ったが退社してプロランナーになり、大学時代にも練習したことがあるナイキ・オレゴン・プロジェクトに加わってアメリカに拠点を移した。

 マラソンの名ランナーだったアルベルト・サラザール氏が率い、5000mと1万mの世界タイトルを連取しているモハメド・ファラーや、ロンドン五輪の1万mで2位、リオ五輪でマラソン3位のゲーレン・ラップなど、トップ選手が所属するレベルの高いチームだ。自分のスピードを高めながら、それを活かす形でマラソンにつなげていきたいという思いがあったのかと思ったが、大迫はそういう考えではなかった。

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