密着ルポ・神野大地は初マラソンの福岡に向け、どんな準備をしているか (5ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun

 練習を終えた神野は、そのまま寮のある日野まで7.5kmを走って戻り、ストレッチしてシャワーを浴び、駅前で牛丼をかきこんでスポーツモチベーションにやってきた。ラストメニューはレイヤートレーニングで、2山だ。

 この日はすぐにレイヤーに入るのではなく、グラビティトレーニングから入った。その意図を中野が説明してくれた。

「西湖で走った時、途中でタレたじゃないですか。その時、コアが抜けたらしいのでコアの刺激が弱くなってきたのかなと思って、その後に腹横筋のコアを入れたんです。そうして40kmを走ったら、けっこうよかったんで定期的に入れていくことにしました」

 通常は4、5セットするらしいが、神野の場合はレイヤーもあるので2種目を1セットのみ。だが、それでも腹横筋に十分な刺激が入るという。

 その後、いつもの通りレイヤートレーニングをスタートした。眺めていると、初めて見るトレーニング内容があった。しかも動きのあるトレーニングと静止動作をかみ合わせた内容になっている。そのメニューの意図を中野は、「レース本番を見据えて」と言った。

「緩急をつけたかったんです。レースになるとずっと同じペースで走るわけじゃない。緩急に耐えられる体にするために負荷を変え、レースの展開をイメージしているんです」

 縦長の台に片足を置き、もう片方の足をバランスディスクの上に置き、その足を自分の体に引き寄せる。支える片足にはかなりの負荷がかかる。また、片足を折り、もう片方は後ろに伸ばして50カウント静止する。筋肉が悲鳴を上げるように神野の口からも苦しい喘ぎがこぼれる。

 中野はきちんとできない場合はカウントしない。止まると声のトーンを上げ、うながす。そうして約2時間弱のレイヤートレーニングが終わった。

 不思議だったのは、レイヤーは筋肉にかなりの刺激を入れることになるが、レース本番の10日前にも行なうという。本来であれば筋肉の疲労を抜き、調整していく期間に入っていくのだが、あえて厳しいレイヤーをこの時期に行なうのは、なぜなのだろうか。

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