密着ルポ・神野大地は初マラソンの福岡に向け、どんな準備をしているか (3ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun

「体の調子はよかったんです。5kmのペースが16分30秒切る感じで、30kmは1時間37分20秒、そのまま40kmを走れば2時間9分ぐらいのタイムでいけていた。でも、28kmぐらいから腹横筋が痛くなってきて力が入らなくなったんです。30kmでペースが落ちたんで、このまま10kmは持たないと思い、やめました。その瞬間はけっこうヤバいなって深刻になりました。福岡国際の1カ月前だったんで......」

 なぜ痛くなったのか。腹痛とも違う状況に不安を感じ、その日のうちに中野ジェームズ修一に報告した。

 すると中野からこんな問いが返ってきた。「西湖、横風強かった?」

「はい」。神野は即答した。

 西湖は湖に沿った長方形のコースだが、その縦長のコースで神野は横風をまともに受けて走っていたのだ。

「そうか。長時間の強い横風に耐えられる体幹のトレーニングをしていないから仕方ない。まぁ、今日は条件が悪かったな」

 中野は腹横筋が痛くなった理由を説明した。

 しかし、なぜ長時間の横風に耐えられる体幹を鍛える必要がないのか。中野はその真意を説明してくれた。

「福岡国際のコースも東京五輪のコースも強い横風に悩まされることはないんです。だから特別な横風対策はしていません。マラソンで勝つために今、何を取るかだと思うんです。トレーニングする時間は限られているので、優先順位をつけてやっていかないといけないですから」

 神野は中野の言葉を聞いてホッとしたという。体の調子が悪いのではなく、腹横筋に痛みが出た原因がハッキリしたからだ。

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