駅伝2冠を逃した東海大の「最強世代」。どこに誤算があったのか? (5ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Kyodo News

 しかし、青学大の田村和希と47秒あった差が徐々に詰まり、6km付近で追いつかれた。ここから塩澤は冷静だった。田村の顔色をうかがいながら力をロスすることなく、相手について走っていたのだ。すると残り3kmぐらいで前半飛ばした田村が遅れだし、逆に塩澤のギアが上がった。

「10kmを超えてからの不安はあったんですけど、今回は逆に10kmを超えてから走りがよかった。もっと前半からいければよかったんですが、強い向かい風と単独走があまり得意じゃなかった分、タイムが落ちてしまった。そこは反省ですね」

 2区は田村をはじめ、塩尻和也(順天堂大)、工藤有生(駒沢大)ら各校のエースが走ったが、塩澤は区間5位と駅伝デビューとしてはまずまずの結果を出した。トップの東洋大との差は50秒、東海大は5位に順位を上げた。

 3区は館澤亨次(2年)である。

 大学屈指のスピードランナーは昨年も同区間を走って区間賞を獲得している。館澤にとっては勝手を知る縁起のいいコースだ。最初から突っ込んだ走りで、前を行く神奈川大、駒沢大との距離をどんどん詰めていく。鬼気迫るような走りは、出雲で悔しい経験をしたからだという。

「出雲では、本当は区間賞を取るのはもちろん、区間新を取らないといけなかったんですが、区間2位で後ろの松尾に負担をかけてしまった。このままじゃダメだなって思って、練習も生活を見直してここまでやってきたんです」

 館澤の激走で神奈川大、駒澤大に追いつき、2位をめぐる三つ巴の戦いになったが、不思議と負ける雰囲気がなかった。絶対に負けられないという気迫が体中から発散されていた。

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