遅咲きの美女スプリンター市川華菜に
「速くなった秘密」を聞いてみた

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 五十嵐和博●写真 photo by Igarashi Kazuhiro

笑顔でシーズンを振り返る市川笑顔でシーズンを振り返る市川「一時は、調子がよくても11秒7台がやっとという状態でしたけど、今年はスタートの誤差はあっても、その後の加速の感じは変わらず、悪くても11秒6台が出せるようになってきました。今の自分の調子がわかるようになってはきましたが、やりたいことがあり過ぎるので、まだまだ気を抜けません。東京五輪まであまり時間はありませんし、正直、ちょっと焦る気持ちもありますけど、やってきたことは間違っていなかったという自信は芽生えてきました」

 以前は、福島がやっている練習を見ても何のためにやっているのかわからなかったが、自分で考えながら練習をするようになって、それが理解できるようになった。今では福島と同じように、自分の走りに活かすため、男子選手の動きやハードル選手の腕の振りなども見るようになり、「やっと競技者として成長し始めました」と市川は笑う。

 その実感通り、日本選手権の200mで福島を破っての2冠を手にした。その3週間前に行なわれた布勢スプリント100mで、初めて福島に勝てた時の感覚が残っていたため、「ビビらずにいけたのがよかった」と振り返る。

「それでも、日本選手権で2冠を達成できた時は、信じられないという気持ちが強かったですね。周りの人が喜んでくれている様子を見て、『現実なんだ』と思えるようになりました。でも、世界選手権の200m参加標準記録(23秒10)を狙っていたので、タイム自体は納得できるものではなかったですし、福島さんの調子が悪かったからの結果ということもわかっています。福島さんは、個人で結果を出しながらリレーでもチームを引っ張り続けてくれた偉大な選手。お互いに標準記録を突破するレベルで戦って勝たなければ、心の底から喜べないと思います。なので、浮かれるような気持ちはまったくありません」

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