【月報・青学陸上部】3連覇ならず。出雲の敗北で何が起きていたのか (2ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun  photo by Kyodo News

 問題は1区に誰を起用するか、だった。昨年、箱根駅伝1区を走った梶谷瑠哉を起用したかったが、まだ80%程度の仕上がりで完全ではなかったのだ。ところが大会3日前ぐらいからグッと調子が上がってきたという。

「3日前にいきなり調子を上げてきたので、イケるかなって思いましたね。1区は向かい風でスローペースになるのを想定していたので、梶谷なら対応できますからね」

 ここで出雲駅伝のオーダーがほぼ完成した。

1区:梶谷瑠哉(3年)
2区:田村和希(4年)
3区:下田裕太(4年)
4区:小野田勇次(3年)
5区:神林勇太(1年)
6区:橋詰大慧(たいせい/3年) 

「昨年のような大砲はいませんが、勝てるメンバーです」

 原監督は自信たっぷりにそう言った。昨年は一色恭志という絶対的なエースがいた。一色がアンカーにいたおかげで選手たちは思い切った走りをすることができた。そうして出雲を制し、3冠達成に向けて大きなスタートを切ることができたのである。

 だが、今年はその絶対的なエースがいない。そのため戦略的にアンカー勝負というより前半で勝負を決めるスタイルに移行せざるを得なかったが、それでも現状で最強の布陣を組むことができた。

 ところが、1区から波乱が起きた。

 調子が上がっていたはずだった梶谷が5.6km付近で落ち始めた。表情が歪み、苦しそうに体を左右に振って走っている。この日、出雲は気温25度、湿度は72%もあった。ロードは照り返しもきつく、体感温度は30度近いはずだ。10月とは思えない異常な暑さのなか、1区で岐阜経済大の選手が中継地点前で倒れ、そのまま棄権になってしまった。そのくらい厳しいコンディションだったのだ。

 梶谷は脱水症状に陥っていたという。

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