出雲で「勝ち方を知った」東海大は、全日本と箱根もトップを奪えるか (2ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun photo by Kyodo News

 5区の三上は鬼塚が先頭できた時、思わずにやけてしまった。3区の松尾が最後に抜かれ、5秒差で鬼塚に襷が渡ったことは聞いていた。だが、鬼塚ならば最低限トップと競った状態か、もしくは差をつけてトップでくると予想していた。それくらいの力があるのはわかっていたからだ。そして、実際、「松尾は抜かれたけど先頭が見える位置でつないでいたし、鬼塚はしっかりと流れを元に戻してくれた」という状態で襷を受け取った。

「あとは、追いつかれないようにしよう。そう思って走りました」

 そう思ったのは昨年の痛い経験があるからだ。昨年の出雲駅伝も青学大と競り合い、5区で三上が青学大・安藤悠哉の激走で差され、トップを明け渡してしまった。

「昨年の出雲は、僕のところで追いつかれてしまったのが敗因だとずっと思っていました。だから、今年はその分もしっかり走らないといけなかったので、気合いが入りましたね。区間賞が取れて、なんとかリベンジできました」

 三上は5区を駆け抜け、区間賞を獲得。2位の青学大に37秒差をつけ、大きく突き放した。昨年の5区の借りを倍返しにしたのである。

「三上さん、ラスト!!」

 アンカーの關が声を上げた。襷を受け取ると、颯爽と6区を駆けだした。だが、無理に引き離そうとしなかったという。

「向い風が強く、暑さもあったんで、無理に行く必要はない。最悪、青学さんに追いつかれてもいいやっていう感じで抑えていました」 

 青学大の橋詰大慧(3年)は、一気に差を縮めようと最初の2kmで15秒差まで迫っていた。しかし、どうみてもオーバーペースだった。その影響が出たのだろう。出雲大社を過ぎて、關がペースを上げるともうついていくことができなかった。

 關は1km2分45秒台に戻し、ペースを上げていく。その姿は、ちょうど2週間前、5000mで自己ベストを更新した時のように力強い走りで、両角監督、チームメイトが期待していた通りのものだった。

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