出雲で「勝ち方を知った」東海大は、全日本と箱根もトップを奪えるか

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun photo by Kyodo News

東海大・駅伝戦記 第11回

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 笑顔でゴールテープを切った東海大アンカー・關颯人笑顔でゴールテープを切った東海大アンカー・關颯人

 出雲駅伝――。

 東海大は1区・阪口竜平が快走し首位に立ったが、3区終盤で青学大と東洋大に逆転され、トップから5秒差で4区エース・鬼塚翔太(2年)に襷(たすき)が渡った

 鬼塚は風が強かったので、慌てないで冷静にいこうと考えていた。少しずつ距離を縮めていき、2㎞を超えると先頭を走る青学大と東洋大に追いつき、自分のペースに入った。

「最初の1kmは全然追いつけなかったんですけど、追いついてからは後ろの足音が消えていったので、もう1回ギアチェンジして、もっと離していこうと思いました。区間新を狙っていたんですが、暑さと風にやられて今ひとつスピードを上げることができなかった。それが悔しいですね」

 鬼塚は完全復活の走りを見せた。9月の日本インカレの5000mでは阪口、館澤から大幅に遅れ、14分22秒37というらしくない成績に終わった。2週間後の日体大記録会でも關が自己ベストを出す一方で、鬼塚は15位と今ひとつ乗り切れていなかった。両角監督は「多少焦りがあったと思います」と、鬼塚の調子を心配していたが、そこからの2週間でしっかりと仕上げてきた。

「日体大の時は關にあれだけいいタイムを出されて多少焦りましたし、悔しかったけど、自分の中では、出雲までには上がってくると思っていたので、それほど心配はしていなかったです。実際、出雲直前によくなり、4区というラクなコースでいいのかなっていう思いもありました。でも、そこを走らせてもらう以上、しっかりと目立った走りをして、トップで襷を渡したいと思っていました」

 鬼塚はその通りの走りを見せ、4km地点でトップに返り咲いた。見ていた東海大の選手たちは大いに沸いたという。両角監督が描いたレースプランが的中し、青学大の原監督の不安が現実になった。この時点で勝負はほぼついたように見えた。 

 鬼塚は区間賞でチームを首位に導き、2位の青学大に14秒差をつけたのである。

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