【東海大・駅伝戦記】10年ぶりの出雲制覇。1区・阪口で勝利が見えた (3ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text by Sato Shun  photo by Kyodo News


「暑いけど、ガンガン攻めていくつもりでした」

 館澤は2秒差で後ろにつけた神奈川大を引き離すべく、最初からピッチを上げて走った。だが、この暑さの中で突っ込んだ走りを見せ、大丈夫なのかと不安になる。レース前日、館澤から気になることを聞いていたからだ。大会前日の午前中、館澤亨次は浜山陸上競技場にいた。多くの選手が大会2日前に刺激を入れて、この日は簡単に調整しているなか、館澤だけは「前日にやりたいんです」と独自の調整法を貫いていた。そして、汗だくになってトラックから戻ってきた時だった。

「いやー暑いですね。これ、ヤバいです。僕、暑さにめちゃ弱いんで」

 館澤は数日前に気合いを入れたというサイドの刈上げを気にしながら、そう言った。天気予報では翌日の本番も気温25度以上ということだった。ただ、表情に暗さはなく、メンタル的には落ち着いているように見えた。

 日本インカレの1500mで惨敗し、5000mでなんとか面目を保って5位に入った。その後もなかなか調子が上がってこなかったが、ここに来てやっと上がってきたのだ。

「日本インカレ以降、このままじゃダメだと思い、まず睡眠と食事の改善を始めたんです。以前はふとした時、グミとかどら焼きとかチョコを間食していたんですが、それをやめてヨーグルトとかハムとか食べるようにして、睡眠は8時間とるようにしました。そうすると体がだいぶ動くようになってきたんです」

 生活面での改善が館澤の動きをシャープにしてくれたという。そのおかげなのか、暑さをものともしない攻めの走りを見せた。

 ところが青学大の2区・田村和希(4年)が猛烈な走りを見せ、38秒あった差をどんどん縮めていく。館澤も懸命に粘るが、最終的に18秒まで詰められた。

「18秒差でチームに1位でつなげたので最低限の仕事はできたかなと思いますが、阪口が作ってくれた貯金を自分が使ってしまった。申し訳ないなって思いましたね。力を出し切って負けたので、実力がまだ足りないってことです」

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