【東海大・駅伝戦記】10年ぶりの出雲制覇。1区・阪口で勝利が見えた (2ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text by Sato Shun  photo by Kyodo News


 阪口は今シーズン絶好調を維持している。6月の個人選手権では5000mで優勝し、7月の網走ホクレンの3000SC(障害)で自己ベストを更新し、東海大記録を出した。9月の日本インカレでは5000mに出場し、日本人トップ、総合でも3位に入った。阪口自身も調子のよさを実感しており、早くから「自分が1区を走ることで鬼塚を他に回せる。それができるとよりチームが強くなる」と話していた。そして、出雲駅伝で1区をつかみ取った。

「阪口がキーマンになります」

 両角速(もろずみ・はやし)監督はそう言った。

 選手それぞれにはそれとなく事前に伝えていたが、最終的なオーダーは前日の朝に伝えた。

「勝ちたいです」

 両角監督は素直に気持ちを吐露する。このオーダーと選手に対する自信がうかがえる。その強い思いが勝利の女神に通じたのか、出雲本番でも、両角監督の狙い通りにレースが動いていくのである。

 出雲駅伝は気温27度、湿度72%という厳しい残暑の中でスタートした。

 1区、阪口は両角監督の狙い通り、先頭に立ち、集団を引っ張って走る。落ち着いて堂々としており、とても初駅伝とは思えない走りだ。

「普段、緊張しないんですけど、(この日は)実はすごく緊張していました。走っていても最初は緊張が残っていたんですが、何かペースが遅いなって感じたんです。それで何回か時計を見たんですが、キロ2分55秒だった。悪くないなって思い、そこからは余裕を持って自分のペースで走ることができました」

 阪口は昨年、夏合宿中に故障し、出雲駅伝は寮でテレビ観戦をしていた。同級生の關、館澤、鬼塚らが快走する姿を見て、うらやましくもあり、悔しさを味わった。

「2年になったら、3大駅伝全部走って結果を出す」と心に決めて、今シーズンはフルスロットルで走ってきた。結果を出してきた自信が、この日の走りにも反映されていた。時々、後ろを振り返り、ライバルの青学大と東洋大との距離を確認し、6kmを超えたところでスパートをかけて前に出た。

「監督の指示通り」で、グイグイ後続を引き離しにかかる。だが、神奈川大が必死についてくる。両角監督曰く、監督車があれば「どんどん行け」と言いたかったそうだが、阪口は襷(たすき)を手に握り、気持ちを前面に出し、2区の館澤にそれが伝わるようにと必死に走った。

 23分16秒、区間賞でトップ通過を果たした。両角監督がキーマンと期待した通りの走りだった。

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