【東海大・駅伝戦記】日本インカレにみる「スーパー世代」2年生の明暗 (5ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text by Sato Shun photo by Nikkansports/AFLO

 一方、松尾は国内で夏合宿を順調にこなし、調子を上げてきた。

 おそらくは夏合宿、一番走り込んだのではないだろうか。「1000kmには届かないですけど」と笑っていたが、笑顔で言える分、余裕も少し感じられた。

 選手がスタートラインについた。夏合宿の成果を見せる時がやってきた。

 スタートからパトリック・ワンブィ(日本大・3年)とサイモン・カリウキ(日本薬科大・3年)の留学生が飛び出し、松尾がついていく。1周目のラップは松尾が奪った。5000mぐらいまでは8人ぐらいの先頭集団でレースが展開したが、ここから關が遅れ始めた。

 残り2000m、松尾は5番手をキープし、3番手・塩尻和也(順天堂大・3年)、4番手・西山和弥(東洋大・1年)を2秒差で追う。このままラストの勝負で競り勝てれば日本人トップを狙える。松尾は懸命に粘るが塩尻、西山も落ちない。ラスト2周、西山が一気に出て塩尻を突き放し、松尾が少し遅れた。

 28分50秒94。

  松尾は自己ベストを更新し、5位に入賞した。

 「いいレースができました」

 ホッとした表情を見せた。

「途中1回、積極的に攻めていこうと思っていましたし、いい位置で走れていたので、これは行かなきゃいけないって思って......。うまく流れについていけて粘れたんですけど、最後の日本人ふたりが......。特に1年の西山に負けてしまったので悔いの残るレースになりました。でも、今シーズン初の28分台を出せましたし、自己ベストを更新できた。1カ月の高地トレーニングの成果が出て、監督や西出コーチに少しはホッとしてもらえたんじゃないかなと思います」

 松尾は当初28分40秒を切るタイムを設定していたという。

 だが、中盤で少し遅れてしまい、思うようにタイムを刻めなかった。それでも28分台を出して、日本人3位は堂々の成績である。しかも、ライバル視する同学年の關にも勝った。

「關はアメリカから帰ってきたばかりで時差ボケもあってキツかったと思う。その中でも勝つことに意味があると思うので、關には悪いけど勝てて自信になりました。他にも強い2年生がいる中、こういう大会で自分の力を出せたのは大きな経験になったので、これからの駅伝につなげていきたいと思っています」

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