【東海大・駅伝戦記】日本インカレにみる「スーパー世代」2年生の明暗 (4ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text by Sato Shun photo by Nikkansports/AFLO

 最後の最後に館澤の"弱み"が出てしまった。

 自己不安は、困難への抵抗力が足りないから起こるものである。成功体験は自信にリンクするので重要だが、館澤の場合、もっとたくさんのレースに出て失敗し、苦しみ、心の抵抗力をつけていくことが必要なのだろう。

「7月の欧州遠征で、弱気にならないで勝負していく気持ちがあれば、世界で戦えるのを実感できたんですけどね。でも、もう終わってしまったので、これを糧(かて)にして来年こそは4冠を達成できるように頑張ります。明日の5000mは切り替えて、この敗北を引きずらないように今日のレースで刺激が入ったと思ってやるしかないです」

 館澤は少しだけ生気を取り戻し、力を込めてそう言った。

 肩を落とした館澤は木村大周マネージャーとともに待機所に戻っていく。

 日本インカレは全国168校から1700名以上の選手が参加しているので、待機場所の確保も大変だ。天気がよいのでサブグラウンドにテントを張ったり、体育館の中を利用したり、体育館周辺の空いた場所を利用したりしている。東海大は体育館周りにある通路をうまく利用して、待機場所を作っていた。レースのある選手は、ここでストレッチをしたり、軽く運動し、サブグラウンドで走って調整する。競技がない選手、競技が終わった選手はスタンドから東海大の選手の応援をしたり、ごはんを食べに行ったり、選手のサポートをしたりしている。

 17時30分からは、10000m決勝が始まる。

 選手がスタートライン付近に集まりだし、思い思いに体を動かしている。東海大からは關颯人(せき はやと/2年)、松尾淳之助(2年)がエントリーしていた。

 關は9月3日までアメリカのフラッグスタッフで、鬼塚翔太(2年)、阪口竜平(2年)とともに高地合宿を行なっていた。2000mを超える高地で距離を踏むような練習はしていないが、酸素が平地の75%というなか、1600mを6本こなすなどの練習で高地順化し、心肺機能を高めてきた。帰国してまだ4日目で時差ボケが残っており、合宿の疲れもあるだろうが、アメリカ合宿を終えた關がどんな走りを見せてくれるのか。西出コーチをはじめ、チームのみんなも楽しみにしていた。

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