競技歴4年で五輪日本代表になった男、ウォルシュ・ジュリアンは何者か (3ページ目)

  • 高橋博之●文 text by Takahashi Hiroyuki
  • photo by Yutaka/AFLO SPORT

 オリンピックに漠然とした憧れはあったものの、クリアすべき目標とは考えていなかった。それは東洋大学入学後も変わらなかった。しかし大学1年の終わりにアメリカへ合宿に行ったことで意識が変わった。

「テキサス州のベイラー大にマイケル・ジョンソン選手とジェレミー・ウォリナー選手というふたりの金メダリストを育てたコーチがいて。今まで400mを専門に学んだことがなかったので、すべてが新鮮でした。その合宿から練習も意識も変わったと思います」

 帰国後、静岡国際を46秒06で優勝してゴールデングランプリ川崎へ大会直前に出場を決めた。その川崎でジュリアンは45秒68を記録して優勝。「最後のコーナーでしっかり加速できました。あとはスピードを維持できれば参加標準記録を切れると思います」とジュリアンはレース後に五輪を意識したコメントを残している。

 細い糸を手繰り寄せるように五輪選考の中心に割って入ったジュリアンだが、その後は関カレ、学生個人選手権ともに標準記録を突破できなかった。迎えた昨年6月の日本選手権、五輪への最後のチャンスだった。予選を出場選手全体1位で唯一の45秒台となる45秒54で走ったが標準記録に0秒14足りない。

「少しでも早く突破したかったから予選から本当に全力。自己ベストでも参加標準記録を突破しないと意味がない。残念に思っているとコーチたちが『最後の舞台の方が絶対にタイムが出る。いける』と言うので、その言葉を信じました」

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