桐生が壁をぶち破る。日本は
「東京五輪で9秒台がゾロゾロ」となるか

  • 折山淑美●取材。文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

 追い風4.7mだった予選は、ラスト20mでガクンとスピードを落として10秒18で走ると、夕方の準決勝は追い風2.4mのなか予選より緩やかな流し方で10秒14という好タイムを出した。だが、それでもまだ決勝を走るかどうかは決めかねていた。200mで自己記録を出したいという思いもあった一方で、裏を返せば、今の状態では100mの自己記録更新は難しいという判断もあったからだろう。

 そんな桐生の決意が固まったのは、2日目の午前に行なわれた200m予選後だった。100mと同じようにフワッとスタートしてから加速してトップに立った桐生は、直線に入ると力を抜いて走り、向かい風0.4mの中21秒41でゴールして準決勝進出を決めた。

「今回は桐生の最後の日本インカレなので(東洋大の)梶原道明監督とは、どの種目に出るかも含めて桐生がやりたいようにやらせようと話していました。それで200mの予選を終わった段階でどんな決断をするかも本人に委ねたところ、『行きましょう』ということになって本人がメディアにも『出ます』と言いに行き、そこからは彼らしいモードを作っていく形ができたかなと思います」(土江コーチ)

 200mの予選結果を見ても、普通に走れば桐生が優勝する可能性が高かった。そこで200m1本に絞らず100m決勝出場を選んだのは、多田修平(関西学院大)がいたからだ。多田も世界選手権後は、ユニバーシアードに出るなど、疲労のあるなかで今大会に出場していた。

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