才媛ランナー鈴木亜由子の選択。東京五輪「マラソンのエース」はあるか (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimiphoto by Nakamura Hiroyuki/PICSPORT

「今回は、あまり動いて消耗したくないという意識がけっこうあって、安全にいき過ぎたのかもしれないですね。あそこはついていくべきところなのに、反応がちょっと遅かった。世界のギリギリの戦いの中で逃してはいけないタイミングというのを、ちゃんと心得ていなかった。日本ならあそこからもう1回いける状況ですが、自分より高いレベルの選手を相手に戦いにいく時は、そのチャンスを逃してはいけないし、自分から掴みにいかなくてはいけないんだなと感じました」

 この大会までの練習は、脚に不安が出て1万mを欠場してしまったリオ五輪の反省から、常に余裕を持たせて行ない、順調に仕上がっていた。今大会5000mに出場したチームメイトの鍋島莉奈はスピードが持ち味の選手だが、一緒に練習をしても「自分は自分」と心の中で唱えて、影響されないようにした。現地の練習ではスピード感が6月の日本選手権の時よりもあり、スタミナとのバランスもよく仕上がり、「あとは本番でやるだけだ」という気持ちだったという。

「後半の5000mを15分17秒に上げられたことで、確実にピークを持ってこられていたし、練習やこれまでの流れは間違っていなかったと思います。そういう中身を見れば、やっぱり力はついてきていると感じました」

 そう手応えを感じた1万mのあとに出場したのは5000m。この種目でもひとつの思いがあった。

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