東京五輪でメダル独占するかも...。
ロンドンで日本の競歩が見せた夢

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Fujita Takao/PHOTO KISHIMOTO

 小林は「メダルを獲れたことはうれしかったけど、前には荒井さんがいて日本人1位ではないので、喜んでいいのか悪いのかと複雑な気持ちでした。ただ、先にゴールした荒井さんがすごい笑顔で待っていてくれたので、それはすごくうれしかったですね」と言う。

 荒井も「本当に何年か前には考えられなかったし、夢でしかないと思っていた複数メダルというのを現実にできたので、今の時代に競歩ができて幸福だなと思いますね。それに丸尾くんもコースですれ違う時にたびに見ていましたが、安定していて普段通りのレースを意識しているのがよくわかりました。チームジャパンとして、みんなで合宿をして、一緒に食事をして、交流を持ちながらやってきたのがよかったのかなと思う。だけど、まだまだ発展途上だと思っている。もっともっと強くなれると思います」と笑顔を見せた。その言葉の裏にはもちろん、今回欠場したトートやタレントといった強豪が出てきた時も、このようなレースをしたいという思いがある。

 世界選手権銅メダルの実績を持つ谷井や、入賞経験を持つ森岡紘一朗(富士通)もいる日本チーム。小林は初出場でメダルを獲得できた理由を、「去年、荒井さんが銅メダルを獲得して、2年前には谷井さんも銅メダルを獲得している。その人たちを目標にして遜色のない練習ができれば戦えるという気持ちがあったので、世界に怖さを感じることはありませんでした」と言う。また荒井も「合宿では、谷井さんも森岡さんも自分の練習に協力してくれた」と感謝する。

 競歩チームは早くから科学的なデータ収集に取り組み、今では陸連の医科学委員会の協力も得て、コンディショニングや暑さ対策を実施している。たとえば、選手それぞれの発汗量や体重減少を見て、試合時だけではなく練習の前後に必要な給水量を出し、個々の選手に対応する細かな対策をしている。

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