川内、中本、井上の3人は「何を考えて世界陸上マラソンを走ったか」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Nakamura Hiroyuki/PICSPORT

「転ぶ前に看板に激突してよろける場面もありましたが、うまく転べたり、冷静だったりと過去の経験が生きていたと思います。それに終盤で前から落ちてきた選手が、一緒に走ったことがある選手ばかりだったので抜きやすかったし、最後には中本さんまで落ちてきたので......。もちろん、7位や8位が見えていたので悔しい部分はあります。メダルが目標と言って、9位というのは最低限の結果も残せなかったと思いますが、過去2回の世界選手権のひどい結果に比べれば、やっと自分の力を全部出し切れたなと思えた。その意味でもこの6年間は無駄じゃなかったなと思いました」

 20km過ぎで一気に遅れたとはいえ、8位とは3秒差。途中の転倒さえなかったら、入賞をしっかり果たせていた、まさに川内らしい走りだった。その川内は、前半で中本をマークして走っていた理由をこう話す。

「中本さんの走りはすごく冷静で、周りのペース変化があっても離れていいところは離れたり、つかなければいけないところはしっかりついたりと的確に判断している。それを過去2回の世界選手権で感じて、今回は中本さんをマークしていこうと考えました。でも実力不足で最後までつけなかった。もし、中本さんにしっかりついて、そこからペースを切り換えられていたら、入賞は確実にできていたと思うので。そこは私の弱さかなと思います」

 川内は「中本さんには絶対的な信頼感を持っている」と笑顔を見せる。その中本について、指導する山頭直樹監督はこう話す。

「12年ロンドン五輪、13年世界選手権と比べると、年齢的な問題もあって同じ練習はできず、多少間引きする感じだった」

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る