サニブラウン、世界陸上100m
決勝進出へ「絶好のチャンス」だった

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Nakamura Hiroyuki/PICSPORT

惜しくも決勝進出を逃したサニブラウン惜しくも決勝進出を逃したサニブラウン 世界陸上ロンドン大会・男子100mは、日本勢にとって世界の壁の厚さを感じるレースとなった。走る才能だけではなく、物怖じすることなく自然体で臨める心の強さを持つサニブラウン・アブデル・ハキームでさえ、簡単には打ち破れないのが決勝進出という壁だった。

 初日の8月4日から始まった男子100m。3人がフルエントリーした日本は予選を全員が通過し、日本短距離初となる3名の準決勝出場を果たした。

 自己ベスト9秒台が3人いる第4組を走ったケンブリッジ飛鳥(ナイキ)は、後半に上体が硬くなって10秒21で4位。第6組の多田修平(関学大)はウサイン・ボルト(ジャマイカ)の隣というプレッシャーのかかるなか、中間過ぎまでボルトなどを抑えて走り10秒19で4位と好走。ともに4位以下のタイム上位者で拾われ準決勝に進んだ。

 3人の中で際立った走りを見せたのはサニブラウンだ。サニブラウンもまた、9秒台を持つ強敵である11年世界王者のヨハン・ブレイク(ジャマイカ)と同組を走った。ブレイクは今季、6月のジャマイカ選手権を制しながらも7月のダイヤモンドリーグは股関節の不安のために欠場。ベストな状態ではなかった。そんなブレイクを横目に、サニブラウンは力むことなく、スムーズなスタートからの加速で離していく。向かい風0.6mのなか10秒05の自己ベストタイで1位通過を果たし、度胸のよさを見せた。

「緊張しないので逆に大丈夫かなと思ったけど、まずまずでした(笑)。ちょっと寒かったので心配でしたが、体は動いたので......。ブレイクはいましたが、自分は自分なので、レースに集中していけたのはよかったと思います」

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