フィジカルをハードに改造中。神野大地の走りは「山の神」時代と違う (3ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • photo by AFLO


「これはアイソメトリックトレーニングと言います。動きを止めて、耐えて、筋肉の長さを変えずに張力を発揮するという収縮方法でトレーニングするんですが、結構体への負担が大きいんです。やっていて気が遠くなってしまうこともありますから」

 何度かステップ台に手がつき、カウントが止まる。汗がしたたり落ち、体が小刻みに震えている。

「呼吸を止めない!」

 中野の厳しい声が飛ぶ。呼吸を止めると酸欠になり、血圧が一気に上昇する。そうなると心臓に過度な負担がかかるので必ず呼吸をしなければならないのだ。

「ハァハァ」と息遣いが荒くなるが、トレーニングは続く。アッという間に約75分のトレーニングが終了した。素早く腰、太ももにアイシングを行なう。そのまま20分間、長椅子に座って安静にする。

「日本選手権、動きがバラバラだったね」

 中野が神野にそう語りかけた。

「練習の時の動画のままだと絶対にイケたはずなんだけどなぁ」

 そう言って、不思議そうに少し首を傾げた。

 神野も試合が終わった後、動画を見て、「動きワルッ」と思ったという。

「確かに練習の動画と日本選手権の走りは全然違っていて......。でも、何で動きが悪いのかわからなかったんです」

 神野の疑問に中野が答えた。

「動きが悪くなるのは体を作り変えていく時、陸上選手だけじゃなく、他のスポーツの選手にも起こります。サーブが入らないとか、(勝てる)試合に負けたりとかするんですよ。簡単に言うと道具が変わるのと同じで、神野は今、足を変えている途中なんです。だから、まぁバラバラ感があっても当然かなと思います。今までなかったところに筋肉がついて、それをまだ自分でコントロールすることができていないわけですから」

3 / 7

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る