山の神・柏原竜二が語る引退の真相。「駅伝に逃げてはいけないと...」 (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

「SNSの情報を気にしていたのもそうですけど、『自分には状況を冷静に見極めるための芯がなかったな』というのが正直なところです。僕は土壇場の調整能力だけはあるから、練習でも25~30kmくらいまでは走れるんですけど、残りの10kmがダメというのがほとんどでした。そうなると、『練習量が足りない』となってくる。東洋大時代、酒井俊幸監督からは『お前は量ができないから気をつけろ』と言われていたし、僕自身も『マラソンは練習量が重要だというけど、本当にそうなのかな』という違和感は抱いていたのですが、周囲の声に流されてしまいました。

 結果としてケガを負い、5ヵ月くらい走れなくなってから、それまでの感覚がなくなってしまったというか......。レースでタイムが出ない原因が、練習量にあったのか、動きにあったのか、食事にあったのかというのがわからなくなってしまったんです」

 今のエリートランナーたちには、初マラソンでも2時間6分台を意識している選手が多い。特に、箱根で注目された選手たちは、「結果やタイムを出さなければいけない」という意識が過剰になっているように思える。メディア側の期待が大きくなりすぎて、そういう言葉を選手に言わせようとすることも影響しているだろう。柏原も「何か言わないと、『あいつは消極的だ』と書かれてしまいますから」と笑う。

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