【東海大・駅伝戦記】館澤が1500m優勝。このスピードを箱根で使う (5ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun  photo by Nakamura Hiroyuki/PICSPORT


「まず出雲駅伝で、1500mで磨いたスピードと夏合宿の成果を出していきたいです。箱根は昨年5区だったんですが、今年は難しいかなと思います。仮に5区に臨むにしても、平たんな20kmをチーム内でトップクラスで走れるようにならないと、山は到底無理だというのが昨年わかったので、今年はまず平坦な20kmで区間賞を取れるくらいの力をつけていかないといけないですね。個人的に走りたいのは3区か7区。そこでの区間賞はもちろん、三大駅伝全部で区間賞を取りたいと思っています」
 
 日本選手権のレース後、館澤はテレビ取材のためにスポンサーボードの裏で待っていた。

「木村選手の仕掛けが効いたね」。そう声をかけると、ニコリと笑った。

「そうですね。あのままスローの状態だとぐちゃぐちゃになっていたんですが、木村ががんばったおかげで自分が走りやすい展開になりました。木村の思い切り攻めている走りを見て、自分も負けるわけにはいかないと走ったので、本当に今日はチーム東海として勝ち取った優勝なんじゃないかなと思います」

 そう言って、積極的なレース展開を見せた木村を讃えた。今回の勝利で館澤は追われる存在になったが、その姿勢は謙虚なままだ。

「今後がすごく大変になっていくと思う。勝って兜の緒を締めよ、ですね」と浮かれる様子はなく、両角速監督曰く「館澤は学年リーダーをやっていますし、周囲からの人望もあり、素直で優しい子」なので、鼻が高くなる様子もない。おそらく自分を見失うことはないだろう。

 だが、館澤の中にあった学年内の序列は変化が生じたようだ。同学年ではこれまで關と鬼塚がチームを引っ張ってきた。館澤も昨年ルーキーイヤーで活躍したものの、「まだまだ、あのふたりは自分よりも上の選手です」と、控えめな姿勢を崩さなかった。ところが、今回の優勝が館澤をより前向きにさせた。

5 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る