エース桐生祥秀が世界陸上100m代表落ち。日本短距離は戦国時代に突入 (5ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之/PICSPORT●写真 photo by Nakamura Hiroruki/PICSPORT

 さらに桐生も冬場は新たなトレーニングに取り組み、3月のオーストラリア合宿では3試合に出場した中で60mや150m、300mという特殊種目に積極的に取り組み、国内でも悪条件の中で10秒0台を連発する好調を維持していた。だが、そのツケが山縣は足首の不安となって表れ、桐生には精神面の疲労が溜まるという形になって表れたと言える。

「負けたのは力不足」という桐生は「今はいろんな人が出てきて100mが盛り上がっていますが、レース後には山縣さんとふたりで、『最初に僕たちがいたから盛り上がってきたのだから戻ってこよう』と約束したので......。これからは僕より上の3人の方の注目が高くなる中で、どれだけ自分自身を持って練習をして、次にどんな結果を出せるのか、(ここからが)正念場だと思います」とも話す。

 サニブラウンが100mと200mの代表になれば両種目の代表は5名となるため、桐生がリレーメンバーとして代表に招集される可能性も残している。

 この結果は今年の世界選手権100m代表の3名が決定しただけでなく、2020年東京五輪へ向けての代表争いのスタートでもある。これまでエースとしてチームを引っ張ってきた桐生が、もしかしたら行くだけで出られない補欠を務める可能性も高い。そんな経験もまた彼にとっては、これまでずっと背負ってきた「9秒台」という重い荷物から解放され、本当の「強いスプリンター」への道を歩みだすための大きな分岐点になるのかもしれない。

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