大迫傑「1年ぶりの1万mですけど」圧勝。長距離界で図抜けた存在に (2ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun photo by AFLO


 だが、上野が限界ギリギリのスパートなのに対して、大迫の走りからは余裕と余力がはっきりと見て取れる。フォームにブレがなく、力強ささえ感じる。おそらく余裕で差すだろうなと思っていると、その予想通りラスト200mで一気に上野を抜き去り、そのままトップでフィニッシュした。

 ゴール後、精根尽きてトラックに倒れ込む上野を背に、大迫は観衆の声援に微笑み、手を上げて応えている。もう1レース走れそうな雰囲気だ。

 このレースに勝ったことには大きな意義がある。1万ⅿには、国内の名だたる長距離ランナーたちがエントリーしていた。設楽悠汰、上野裕一郎に加え、村山謙太(旭化成)、過去このレース4連覇を果たした佐藤悠基(日清食品グループ)、鎧坂哲哉(旭化成)、服部勇馬(トヨタ自動車)、3代目山の神・神野大地(コニカミノルタ)らである。みな、東京五輪のマラソン枠を巡って大迫と争うであろうライバルたちだが、彼らにトラックで、改めてそのスピードと強さを見せつけ、決して小さくはない心理的ダメージを与えた。

 それだけはない。4月17日のボストンマラソンでは、初めてのマラソン挑戦にもかかわらず、2時間10分38秒で3位に入った。すでにマラソンへの適応力の高さを見せつけ、東京五輪を狙うライバルたち、陸上関係者の度胆を抜いている。

‟大迫、恐るべし"

 トラックでのスピード、マラソン力とも日本のトップランクの力を誇示したのだ。レース後、上野は大迫のことを「速い」ではなく、「強い」といった。

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