復調した才媛ランナー・鈴木亜由子「東京五輪のために今確かめたい」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 築田純●写真 photo by Tsukida Jun

 すでに参加標準(32分15秒00)を突破していて、この大会で3位以内に入れば世界選手権への道が開けるという状態の選手が13名も出たレース。その全員が順位を意識して最初の400mが78秒、2周目は82秒とスローペースになった。その中でも鈴木は落ち着いて前方につけ、1400mからはまだ参加標準を破っていない堀優花(パナソニック)が1周のラップを76秒に上げて引っ張り出すと、すぐに対応して、ともにリオに出場した関根花観(日本郵政グループ)とともに先頭についた。そして堀のペースが2800mを過ぎて少し落ちてきたのを見逃さずに、3000m過ぎからは自分が先頭に立って集団をひっぱり始めた。

 先頭集団が徐々に減り、6000m付近で関根が遅れると、鈴木と松田に一山麻緒(ワコール)を加えた3人に優勝争いが絞られた。鈴木は先頭の松田のペースが7600m手前からは1周77秒に落ちてきたのを見て、74秒に上げて仕掛けた。2~3mの差がつき、しかし、最大5mほど離したものの、松田を完全に振り切ることができない。ペースが落ちた8300mで松田に追いつかれてしまった。

 その後はふたりのマッチレースになり、9100mでも仕掛けるが松田に粘られ、最後のスパートで敗れた。最後のスプリントは、世界と戦うために必要な自分の課題と口にしていたものでもある。

「春先は故障をしていましたが、5月5日にアメリカで走って(1万mを31分41秒74)からは故障もなく来ていました。それまでは、ずっと足を保護するために底の厚い靴を履いていたんですが、薄い靴を履けるようになって、スパイクを履いて200mのダッシュや、1000mのインターバルに近い練習をできていたので。だからスピード練習という点では、できていたと思うし、今回5000mに出る鍋島莉奈(日本郵政グループ)ともけっこういい練習ができていたので、それを実戦の場で出せなかったのは......。松田さんに差をつけた時に、74秒でもっと押して行けなかったのは、しっくりいかないところだし悔しいところです」

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