井上大仁の妄想力。「東京五輪のマラソンで勝つイメージもできている」 (5ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by AFLO

 MHPSの旧社名、三菱重工長崎時代に2014年アジア大会に出場した、山梨学院大の先輩でもある松村康平も、「30kmくらいから仕掛ければ2時間9分台で勝てる」という黒木純監督のアドバイスを受けていた。松村はその通りに仕掛けたが、そこで突き抜けることができず、最後までハサン・マフブーブ(バーレーン)、川内優輝の2人と競り合う展開になった。そして、スタジアム内のラスト100mのスプリント合戦でマフブーブに1秒競り負けて2位に終わり、翌年の世界選手権代表内定を逃している。

 もともと、チームには「超エリート」と言われるような選手がいなかった。アジア大会でもう一歩優勝に届かなかった松村の走りは、叩き上げで謙虚な選手が多いというチームカラーの表れなのかもしれない。しかし、「井上はそんなチームカラーを払拭できる選手」と話す黒木監督の期待に応えるため、井上は強い決意を抱いている。

「『挑戦者として上位を狙いたい』とか、『勝てたらいいな』ではいけないというか......。謙虚さも大事ですが、最後に競り合った時には『俺のほうが絶対に強いんだ』というプライドを前面に出していかなければいけない。それは、うちのチームだけではなく、日本の男子マラソンが世界と差を開けられている現状をひっくり返すためにも必要なことだと思います」

 世界選手権に関しても、ロンドンの街を先頭グループで競り合い、最後の直線ではケニア人選手に競り勝つイメージはできている。ガッツポーズでゴールし、「やったな!」と声をかけてきた黒木監督とガッチリ握手をするシーンまで妄想済み。それが現実になる瞬間をぜひ見せてほしい。

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