世界陸上日本代表で最速タイム、井上大仁が東京マラソンで試したこと (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by AFLO

 レース後半の課題に気づいたのは、初マラソンのびわ湖だった。井上は15kmまで5km15分0秒台の集団につき、25kmまでもそれぞれの5kmを15分台前半でまとめるなど合格点に近い走りをした。しかし、そこからは15分48秒、16分30秒、17分04秒と失速して2時間12分56秒でゴールしている。

「びわ湖の時はマラソンを知らなすぎましたね。タイムだけを見れば最初は順調でしたけど、集団の中で走りを安定させることができなくて。それで後半になって一気に崩れてしまい、ゴールタイムは2時間13分近くまでかかってしまいました。経験や練習が不足していたというよりも、気持ちの面で準備が足りていなかったと思います」

 黒木監督が井上にマラソン挑戦を打診するきっかけとなったのは、昨年の元日に行なわれたニューイヤー駅伝だった。井上はエース区間4区を走り、チーム順位を10位から6位まで上げ、区間新記録を更新した設楽悠太とわずか30秒差の区間3位に入った。

 東京五輪をマラソンで狙うために、早いうちから五輪予選の緊張感を経験させておきたいと考え、黒木監督はその日の夜に「マラソンを走らないか」と井上に提案した。井上はひと晩考えて「やります」と返事をしたが、びわ湖までの準備期間は約2カ月しかなかった。

 練習内容は、同じチームの先輩で2014年に2時間08分09秒を出し、同年のアジア大会で2位になっている松村康平の練習を参考にした。ポイント練習は順調にできて、2時間09分台を出せるくらいの手応えはつかめたが、トータルでは少し抑えすぎた部分もあったと振り返る。

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