「マラソンにホームランはない」。瀬古利彦が神野大地に贈った言葉 (7ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun

 神野は、半端な気持ちではマラソンをやれないと改めて強く感じたという。

「あと、35km付近になって相手と競った時、これだけやったという自信が大事になってくると教えてくれました。そういうオーラが相手に伝わり、相手は『こいつ、まだ走れるのか』とダメージを受ける。瀬古さんはそういうオーラを発して宗兄弟に勝ってきたと言っていました。瀬古さんは100kmジョグとかをやってきて、それが自信になったそうですが、僕は今、瀬古さんが当時していなかったフィジカルトレーニングを積んでいますし、ケアも十分にやっている。それにプラスして泥臭く走りのトレーニングをしていくことで瀬古さんのように結果を出せると思っています」
 
 東京五輪に出場するためには福岡国際マラソン、東京マラソン、びわ湖毎日マラソン、大分別府毎日マラソン、北海道マラソンのいずれかを走って結果を出し、さらにマラソングランドチャンピオンレースに勝たないといけない。複数回での結果が求められる二段階方式で代表選手が決まるので、一発屋でなく、より安定した力が求められる。

「中野さんには、『東京五輪に出るためには最低2本、結果を出さないといけない。1本まぐれで走れて選ばれたという選考にはならないので、より普段からケアに時間をかけている選手じゃないと2本結果を出すのは難しい。それなら神野にチャンスがあるんじゃないか』って言われました。僕はケアを人一倍やっているし、2本しっかり走れる自信がある。この選考は自分に有利かなって思います」

 中野は、その選考方法が自らのやる気を駆り立ててくれているという。

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