「マラソンにホームランはない」。瀬古利彦が神野大地に贈った言葉 (6ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun

 その点、強くなる選手は、「あなたからはもう学ぶものがないから代わってもらいます」と、ハッキリと言い、次のステップに向かう。神野も自分の選手生命には限りがあると思っているので、強くなるためには躊著しない。それが今回、中野との契約に至った理由のひとつでもあると思う。
 
 トレーニング後、神野は両膝と右アキレス腱にアイシングをした。アキレス腱痛は3月半ばの日本陸連のニュージーランド合宿中に発症したものだ。そのために合宿中はほとんど走ることができなかったが、逆に中野からもらったレイヤートレーニングのメニューをこなすことができるなど、いろんな収穫があったという。

「海外合宿のいい面、違う面の両方をこの時期に見られたのはよかったです。個人的には泥臭く日本でやっている方が合っているかなと思いました。あと、与えられたトレーニングもできましたし、瀬古(利彦)さんが来て、いろんな話をしてくれたのはよかったです。特にタメになったのは気持ちの面ですね。より覚悟を持ってやらないとマラソンの成功はないなと思いました」

 期間中、特別なミーティングはなかったが、朝・昼・夜の食事の時に瀬古とさまざまな話をしたという。そこで印象に残った言葉は携帯にメモったが、神野の心に刺さったのはこのフレーズだったという。

"マラソンにホームランはないぞ"
 
 マラソンには一発当たるようなまぐれはない。マラソンはスポーツで一番キツく、厳しい。だからこそ一番キツい練習をしないといけない。そうして地道に努力した者が喜ぶことができるスポーツだ。

6 / 8

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る